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勉強法を考える



 皆さんこんにちは。大学2年の宮崎です。そしてあけましておめでとうございます。


 これで3度目のコラムになりますが、何を書こうかとても迷った挙句、勉強法について書くことにしました。年が明け、新たな気持ちで進むにあたって良い機会になります。これを読んだ人が検査の学習のみならず様々な側面でメリットを享受できるだろうと考えています。それも、いわゆる“勉強”に関する話はSOLSの仲間とすることはあっても、大学内で話すことがないと感じているためです。表向きには話題にしたくない嫌いがある一方で、皆が欲している話題の1つであると考えられるので、需要ある話題だと思います。

 ただし、僕は学習におけるプロでもなければ、指導者でもありません。そのため学習に難がない方や成績が良い方にとっては当たり前のことしか書いていませんのであらかじめご了承ください。僕がただの平凡な一大学生であることは前提でお読みください。




 まず本題に入る前に前提として考えておきたいことは以下です。


・今の学修は将来に直結する要素がとても多い。大学受験までの受験をパスするための〈手段〉のように科目を扱い、競うような二次的価値創出から脱却するべきである。つまり、成績や点数を用いた消極的な競争には意味がないということ。大切なのは専攻分野の知識を少しずつ自分のペースで吸収していくこと、そして自分が知識を増やしていく道のりを楽しむこと。

・検査学生の目標はまぎれもなく臨床検査技師国家試験合格である。なぜなら国家試験を通らなければ臨床検査技師にはなれないからだ。よって目指すべきは国家試験であるが、それをゴールとみるのではなく、適切な思考として“通過点”として解釈するということである。それを前提としたうえで学習していくということ。

・勉強で目指すことは、その場しのぎの知識に終わらせることなく、必要な時に引き出せるように知識を持っておくというレベルである。その場しのぎ程度で出る結果は、一時的な好結果に過ぎず、習慣の力によって得られたものとは程遠い。




 まず結論から示すと、学習での到達点は

     「自分で(誰かに)説明できること」 

だと考えています。僕は友達が少ないですから(笑)、自分で独り言を言い続けて勉強していますが、誰かに質問されたときに適切に回答することがこれに該当します。


ではこのレベルに達するために必要な要素を分解して考えていきます。




 まずインプット。インプットとは“情報を入れること”です。

 つまり「情報が知識に変わる過程」と表現することができます。僕はこのステップが最も大切であると考えています。なぜなら、最初に入れる情報量とそのインプットの仕方が、この後のアウトプットに大きな影響を与えると考えるためです。

インプットで大切なことは、

   ➀記憶するべき事柄の原理を正しく理解すること

   ②自分で必要な情報を調べること

   ③流れを意識して整理すること

   ④これらを説明できるように“練習”すること

と考えています。原理をどこまで踏み込む必要があるかは科目などにより様々でありますが、最低限必要な原理は抑えるべきだと思います。単なる丸暗記は結局覚え直しに時間がかかって、時間の無駄になる可能性が高いためです。

 ちなみに「授業はそれだけでお金がかかっているのだからその時間に覚えたほうが良い」とかいう意見を最近聞きましたが、そんな器用なことはできる人は少ないと思います。そんなことより、「受けた授業の時間の価値を上げるためできる行動をする」方がよっぼど良いと思います。つまり授業を受けて完全に忘れてしまう前に復習に着手したり、必要ならまとめておく。そうすることで過去に経験した時間の価値を上げていく方がよいと思います。



【具体例1】

血液学では「貧血」について学びます。

これは「ヘモグロビンが基準値以下になった状態」として定義されています。そして貧血は赤血球指数という指標を用いて分類が行われます。その際使う赤血球指数はMCVとMCHCであり、MCVはmean corpuscular volumeであることから平均赤血球“容積”であり、MCHCはmean corpuscular hemoglobin concentrationであることから平均赤血球ヘモグロビン“濃度”であり、それぞれ容積で分類、ヘモグロビンの濃度で分類ができる指標だと英語から理解できます。MCVは容積の話なのだから「小球性」「正球性」「大球性」として分類されるのは納得できるし、MCHCは濃度の話なのだから「低色素性」「正色素性」として分類されることも納得がいくと思います。


・丸暗記の場合

貧血→MCVが小さい→小球性


・工夫をする場合

貧血→赤血球指数調べ鑑別する→MCVが小さい→Vはvolumeのこと容積が小さい=小球性


丸暗記では情報量が少ないうえに結びつけが困難です。しかし、定義や原理、略語などを正しく理解して、その流れを意識したインプットによって記憶は強化されます。よって長期的に保持することが可能だと考えます。



【具体例2】

微生物学では細菌を鑑別していく過程で様々な培地を使います。その一つとして「TSI培地」というものがあります。これが何を見るためのものかを正しく理解するためには、TSIが何を意味しているかを考えることが大切です。

TSIはtriple sugar iron agarの略として使われると理解しておけば、

   triple sugar→3つの糖=ブドウ糖、乳糖、白糖の利用を調べる

   iron→鉄が含まれている→硫化水素が産生され鉄と反応して硫化鉄ができることから硫化水素産  

               生性を調べる

   agar→寒天が入っている“固形培地”

これをまず理解すれば、最低限何を調べるかわかります。加えてガス産生性を調べるなどの追加情報は一緒に暗記することです。


微生物で出てくる培地は「TSI培地」や「SIM培地」など略語で示されているものも多いです。これらを丸暗記することは困難です。やはり略語が何を意味しているのかを調べて情報量を増やすことで、結びつけるきっかけを自分で作ることが大切だと考えます。



【具体例3】

化学や免疫の分野で蛋白の「電気泳動」を学習します。これは荷電状態にある蛋白に電場を生ずることで蛋白が移動して、その性質によって分類される方法のことです。

蛋白質は多数のアミノ酸から構成されているために、蛋白質はアミノ酸が持つ「両性電解質」としての性質を持っています。つまり周囲のpHに依存して自身の荷電状態が規定される性質を持っているのです。これが蛋白が荷電する理由です。

荷電状態にある粒子の移動は、電場存在下で「クーロン力」という力を受けることから説明ができます。蛋白の荷電をq、電場の大きさをE、生じる速度をv、抵抗係数をkとしたときに、生じるクーロン力はqE、逆方向に生じる力はkv。蛋白粒子は一定速度で移動することから、力が釣り合うとしてよく、

     qE=kv  ⇔ v=qE/k 

が導出されます。見たことある式をかと思いますが、これは暗記ではなく導出する内容だと僕は考えています。(ただし電気泳動でここまでやる人はいないと思いますが)


特に化学の分野で示される様々な式や計算は、その原理を正しく理解して運用することが求められています。それも丸暗記では通用しないのですから、時間をかけて理解して練習することが大切だと思っています。




 次にアウトプットです。アウトプットとは“入れた知識を外に出すこと”です。

 これは「知識が定着する過程」として表現できます。記憶の強化に最も効果的なのは「インプットするときに自分で説明できるようにしたものを、白紙状態でも同様にできること」をアウトプットの方法として採用することだと考えています。僕のおすすめとしては、インプットして自分で説明しながら得た知識を、その直後に実際に白紙状態で説明できるかを試してみることです。ここでは紙に書きながら誰かに教えるつもりでやってみることもおすすめです。そしてこれを間隔をあけて練習してみることです。間隔練習をすることで、より長期的に記憶を保持できると思います。忘れてしまっても、また勉強し直したり想起することでより強固な知識となります。

 また別の方法としては、「問題を解くこと」です。高校までとは違っていわゆる問題集があまりないため、アウトプットに困ることもあると思います。この場合は、自分で問題を作ってみることが方法としてあげられます。しかし、これは相当時間的な余裕がなければ難しいです。僕もExcelを利用して問題がランダムに出てくるシステムを作って、問題を作成していたこともありましたが、完璧にはできていません。これも優先順位を決めて、自分が苦手とする分野や、暗記することが難しいような分野で実施するなど自分の中で決めておくことが必要です。

 その他にも「赤シート」を活用したり、配布されたプリントを活用したり、アプリを使ってみたりなどさまざまあると思います。




 ここまで行うことで、結果として「自分で説明できること」を達成することができます。このレベルまでもっていくと、試験などで「小テストでなんとなくこれが答えだった」や「これ先生なんか言っていたな」など曖昧な状態を脱することができます。もちろん時間が限られていますから、試験勉強をするにあたって、おろそかになる科目が出てくる場合も往々にしてあります。その場合には優先順位を変更して目の前の試験を突破し、あとから時間をかけて学習し直せばよいのです。時間があるうちには「理解」を重視した学習をすることによって、あとからその結果が出てきます。

 実際に僕は成績や成果について非難されたことがありますが、学習と真剣に向き合い続け実施と改善を繰り返した結果、成績はとても上昇しました。実際に実習でも座学内容を活用することができています。大切なのは成績が上がったことではありません。内容が定着し知識になったことが大切です。決して他人との勝負ではありません。自分が知識を身に付けられるか、それが大切です。



 即効性のあるものに人間はとらわれます。しかし、そんな一時的な好結果にはとらわれることなく、自分にとって必要な知識を少しずつ蓄えていく方法しかありません。成績や評価などの数字に呪縛されることなく、自分が成長するために今の時間・努力・修練が必要なのだと考え生きてゆく。それを継続していくことが生涯学習者として大切だと僕は考えています。

 読者の方に何かしら良いものを与えることができれば幸いです。時には辛くなってやりたくなくなることもあります。それは誰でもそうです。ただ、今の勉強は決して無駄にはなりません。少しずつ分かるものを増やす、1歩ずつできることを増やす。ともに進んでいきしょう。



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